撮影:あべほなみ
ミシンは八王子市内、甲州街道沿いにある美容院である。店内には店主お気に入りの用具をはじめ、無用の古家具や雑貨も一緒に並んでいる。一面空いた白い壁は、毎月アーティストや職人の方々が展示できるように開放されているスペースである。普段から散髪していただいていたご縁で、展示の機会を頂けた。 個展は初めての経験であり、美容院内にあるギャラリーということも特別な機会だった。作品を見に来ようとするギャラリーとは違い、散髪の傍で作品を見てもらうような場所であったことから、ビジュアルが片手間にでも相手の目に移るように、無駄なものをできるだけ削ぎ落とそうと、額装した作品のみ展示することにした。 作品は展示のお話をいただいた後から約5ヶ月の間に作ったものである。自分が制作しやすい環境には常に、細い線画やグリット、パースのような、出自と交えるような要素が土台にある。それから逃れようとしたり、向き合ったりしながらも、離れようのないことだと感じ、立体的な文字を扱う作品を作ろうと思った。一方で、そういったものにすがりながらでないと形を作れない自分の不器用さも、作品を通じて伝えたいと思った。